2012年4月26日
◆第144回 和歌山眼科学会
日時:平成24年4月22日(日) 15:00~17:00
場所:和歌山マリーナシティロイヤルパインズホテル
【一般講演】 15:00~16:00
1.「脳腫瘍栄養血管塞栓術後に生じた眼動脈閉塞」
○石川伸之、宮本武、雑賀司珠也 (和歌山県立医大)
2.「発症後3年以上経過してからの硝子体手術により
視力改善を得た乳頭ピット黄斑症候群の1例」
○中西秀雄、伊藤初夏、瀬戸口義尚、黒田健一、雨宮かおり、谷口美砂
岡本好夫、大谷篤史(日赤和歌山医療センター)、鈴木美都子(鈴木眼科)
黒田純一(眼科黒田クリニック)、田中康裕(タナカ眼科)
3.「放射線網膜症の2例」
○友寄勝夫、白井久美、岡田由香、雑賀司珠也 (和歌山県立医大)
4.「クリスタリン網膜症のOCT所見」
日赤和歌山医療センター 大谷 篤史
【特別講演】 16:00~17:00
演題『糖尿病網膜症の治療戦略と糖尿病治療』
座長:和歌山県立医科大学 眼科学教室 教授 雑賀 司珠也 先生
講師:山形大学 眼科学教室 教授 山下 英俊 先生
世界における糖尿病患者数2000年に約1億7千万人と推計されており、2030年には倍増すると推計している。日本でも厚生労働省の国民栄養調査によると、平成9年690万人、平成14年740万人、平成19年890万人と急激に増加しており、上記のWHOの推計を上回る速度で増加しつつある。糖尿病患者数の増加にともない、大血管合併症(心筋梗塞、脳卒中)、細小血管合併症(網膜症、腎症、神経症)も増加することを示唆している。TY Wongらのメタアナリシス(META-EYE Study)によると、現在、糖尿病網膜症患者は1億人に上るとの推計がある。糖尿病網膜症は後天性視力障害の原因の約5分の1をしめ、大きな社会問題にもなっている。このような状態に対応するための治療戦略を今後、考え直し、整備していくことが必要である。本講演ではこのような現状と今後の課題を考える。
治療戦略の第一歩は糖尿病患者数増加を抑制することであるが、その基本ともいえる糖尿病診断基準において網膜症診断は大変重要な情報を提供している。さらに糖尿病網膜症発症・進展を抑制するため、一次予防(網膜症の発症の抑制)、二次予防(網膜症重症化の抑制)を目指す必要がある。一次予防、二次予防としては、血糖、血圧のコントロールなどの全身管理が重要であり、その有効性が報告されている。さらに、眼科治療(光凝固、硝子体手術、眼局所薬物治療など)は急速に進歩しており、多くのエピデンスが蓄積されてきた。今後、われわれ眼科医は内科医とこのような治療戦略を共同、連携して整備することが必要である。このような糖尿病網膜症診療ともに、糖尿病患者での大血管症の予後に網膜症の重症度が有意な関連をしめすこと、そして、大血管症発症の予測に網膜症の重症度の診断が役立つ可能性を示すデータを提供することにより眼科 - 内科の双方向性の情報交換が必要と考える。
懇親会・雑賀司珠也和歌山県立医科大学教授講座開講5周年記念祝賀会